根本的に便秘になりやすいのは「女性・高齢者・ダイエット中の方」で、環境的に便秘になりやすいのは「デスクワーク中心・ストレスフル」な生活を送っている方です。女性は身体の構造上便秘になりやすく、ダイエット中の人は食事制限の兼ね合いで便秘に、そして高齢者は加齢による腸管や神経の働きが悪くなることで便秘になりやすいのです。便秘には根本的な要因と環境的な要因、そして双方が重なる3つのパターンがあり人によって原因は様々です。しかし便秘には明確な原因があることも事実で原因を解決することで頑固な便秘を根本から解消することは可能なのです。
1.便秘とは
便秘とは大腸内の排泄物(便)の通過が通常よりも遅くなったり、腸内に便が長時間とどまるなど、排便が正常に行われない状態のことをいいます。
便秘は人によって症状が様々で「排便後にスッキリ感が無い・排便量がいつもより少ない・便が硬く排便に手こずる・排便間隔が不規則」など様々な症状を有する疾患です。
便秘の定義
・日本内科学会:3日以上排便が無い状態と毎日排便があっても残便感が残る場合も便秘とされています。
・日本消化器病学会:排便が数日に1回程度に減少し、排便の間隔が不規則で便の水分含有量が低下し硬化していることを指しますが明確な定義はありません。
・国際消化器病学会:排便が週3回未満・排便の25%(4回の内1回)以上が硬便・排便時に強くいきみ残便感、閉塞感が残る頻度が25%以上などです。
便秘症状には個人差があり、研究学会でも定義がバラバラなので便秘症状を定義付けすることは難しいですが、定義をまとめると「3日に一度排便が無い・排便間隔が不規則・排便後に残便感や閉塞感が残る・排便時に強くいきむ」症状が便秘の症状と考えられます。
便秘の種類(機能性便秘と器質性便秘)
・弛緩性便秘:腸管の緊張がゆるむことでぜん動運動が十分行われないため「大腸内に便が長くとどまり水分が過剰に吸収されて硬くなる」便秘症状。
便秘の中でも頻度が高く、デスクワーク中心の仕事や身体を動かすことが少なく筋力が少ない女性や高齢者に多い。
・けいれん性便秘:自律神経の過度の興奮によって腸管が緊張し正常に腸管が働かないため便がうまく運ばれないタイプの便秘症状。
特徴としてはウサギの便のようなコロコロとした便になりやすく便秘と下痢を交互にくり返すことも多い。
職場や家庭環境などでストレスを感じ常にリラックスできてない人に多い。
・直腸性便秘:便が直腸に達しても排便反射が起こらず、直腸に便が停滞してうまく排便できない便秘症状。
特徴としては痔や恥ずかしさなどにより排便を我慢する習慣がある人に多く精神的なことが作用する。
・器質性便秘:イレウス、大腸がん、腸管癒着などの器質的な原因があって、消化管(小腸・大腸)に物理的な通過障害(ポリープなどが便の通過を邪魔する)ことで起こる便秘を言う。
※器質性便秘の疑いがあり血便や激しい腹痛、嘔吐など以上を感じる場合はすぐに病院へ行き検査や医師による診断を受けて下さい。
便秘による健康被害
腸内環境悪化:便秘により便が腸内に停滞すると腸内環境が悪玉菌優勢の状態となり腸内環境が悪化します。
・体内環境悪化:便秘の影響で腸内環境が悪化すると身体に有毒なガスが発生し、腸から吸収されることで免疫力の低下などの健康被害のリスクが向上します。
・全身の血流悪化:腸内で便が停滞すると大腸が膨らんだままなので骨盤付近の血流が悪化し全身の血行が悪化してしまいます。
・便秘になると「腸内環境悪化→全身の血行悪化」というサイクルが体内で起こります。
酸素や栄養素などの循環を行う血液が滞ることで「肌荒れ・肩こり・腰痛・疲労」などの症状が起き、便が滞留することで「ストレス・肥満・腹痛」などの症状が起こります。
2.便の状態と腸内環境
排便状態が良く良好な腸内環境は善玉菌が多く悪玉菌が少ない状態で、柔らかくバナナ状の便が排泄されます。
しかし善玉菌の数が減り悪玉菌の数が多い状態だと消化吸収が滞り、便が滞留することで硬い便やウサギの便のようなコロコロとして状態になります。
理想の便の状態
理想的な便の状態は「水分量が多く柔らかい・バナナ状のものが2本程度・黄色から茶褐色・悪臭が少ない」などの特徴があります。
そして排便時に残便感や閉塞感が無く「スッキリ感・爽快感」があると理想の排便と言えます。
理想的な腸内環境
腸内環境を作るものに「善玉菌と悪玉菌」がいます。
理想的な腸内環境は善玉菌が悪玉菌よりも優勢な状態を保ち弱酸性の環境を維持する事で悪玉菌の増加を抑えています。
ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が働く事で消化吸収が促進され排便に必要な「ぜん動運動」を活発に起こしてくれるので排便状態が良好になります。
便秘気味な便の状態
水分量が少なく硬い状態の便やウサギの糞のようにコロコロとした球場の便が便秘では代表的な便の状態です。
便秘と言うと硬い便ばかり想像しがちですが実は下痢も便秘状態の一つなのです。
便秘になりやすい腸内環境
腸内環境が悪いとされる状態は善玉菌よりも悪玉菌が多い状態です。
ウェルシュ菌などの悪玉菌が増殖すると腸内環境は弱酸性からアルカリ性えと変化し腸内腐敗がおこりガスが発生します。
そのガス自体が腸内で滞り便の排泄を物理的に阻害したり、ぜん動運動を抑制し便秘になってしまいます。
そしてガスに含まれる有害な成分を腸から吸収する事で「肌荒れ・免疫力の低下・発がんリスク増加」などの全身に影響を与えます。
3.便秘の原因
食べ物が胃に運ばれることで起こる排便の仕組みは自律神経に支配されています。
自律神経の働きが正常でないと正常な排便は難しく便秘になりやすいということです。
大きな便秘の原因を自律神経として腸内環境が良くない人や「女性・高齢者・ダイエット中の人・特定のお薬を服用している人」も便秘になりやすいとされています。
全体の便秘原因
・ストレス:排便を促す自律神経の働きが乱れる大きな原因はストレスです。
自律神経には日々のストレスから身体を守る為に働く交感神経とリラックスしている時に働く副交感神経があり、ぜん動運動や消化が活発になるのは副交感神経が優位に働いている状態です。
つまり日常的にストレス環境下にさらされていると排便に必要な副交感神経が働けなくなる為、排便行為自体がストップされてしまうということなのです。
・食生活:排便に有利な腸内環境は日々の食事から作られます。
そして腸内環境を良くも悪く整備しているのが善玉菌や悪玉菌と言われる「腸内細菌」なのです。
現代の日本では食の欧米化が進み野菜が少なく肉や揚げ物など「高カロリー・高脂質」になりがちです。
このような食物繊維が少なく脂質が多い食生活が腸内の悪玉菌を増やし悪玉菌優勢な腸内環境を作り出してしまうのです。
・冷え性:「冷えは万病のもと」と言われますが、便秘に限っても例外ではありません。
体が冷えると血管が収縮し酸素や栄養素などの身体を動かす為に必要なエネルギーの供給が低下します。
その結果腸を動かす筋力のエネルギー不足で腸のぜん動運動が低下します。
さらに体温が下がる事で腸内環境を整え便秘を改善してくれる善玉菌の働きも悪くなりますので身体が冷えることは便秘には良くないのです。
・風邪薬:腸内環境の悪玉菌が増え悪化することが便秘原因の一つですが、詳しく解説すると腸内での主な便秘の原因は善玉菌が減ってしまうことなのです。
日本の医療では風邪をひくとほぼ必ず「抗生物質」が処方されますが、抗生物質とは菌を死滅させる強力なお薬なのです。
つまり日頃病院やお医者様で処方される風邪薬を飲むことによって悪玉善玉に限らず腸内細菌は死滅し善玉菌が減る事で便秘になる可能性もあるのです。
タイプ別の便秘原因
・女性:日本人女性の半数以上が便秘を抱えていると言われており、その原因は女性特有の構造によるものです。
まず女性は男性に比べ筋力(腹筋)が弱い為便を排泄する力が弱いこと、女性ホルモン(黄体ホルモン)が働くことで身体に水分や塩分を貯め込む様に作用し便が硬くなりやすく、子宮筋の収縮を抑制する働きがぜん動運動を弱めてしまうことが挙げられます。
そして恥ずかしさから排便を我慢する傾向にある女性が多く、これがせっかくの便意を逃してしまう原因にもなるのです。
・高齢者:60歳以上の高齢者になると男女問わず便秘の人の割合が増えています。
高齢になると何故便秘になるかというと、まず胃や直腸の知覚が低下し便意を感じ難くなり、食事の量が低下することで便の量が減り便意をもよおし難くなることと、加齢に伴い腸の働きが低下し便が腸内に長時間とどまることで便が硬くなりやすく、腹筋や肛門括約筋の筋力が低下することで便を押し出し難くなることが高齢者の便秘の主な原因なのです。
・ダイエット:減量には必ず「糖質制限orカロリー制限」の食事制限が付き物です。
便秘になる原因として糖質制限の場合はお米や芋類などの糖質を抜き肉類が多くなり、食物繊維が少なくタンパク質や脂質が多い食生活になり腸内環境は悪玉菌優勢になりやすく、ぜん動運動も低下しやすくなります。
置き換えダイエットなどのカロリー制限場合は単純に食べる量が減る事で便の量が減り便意を感じにくくなり便秘になりやすいのです。
・特定のお薬:医療で使われるお薬の中にも便秘を招くものが多数存在します。
まず鎮痛剤であるモルヒネや鎮咳薬(コデインリン酸塩水和物)などは腸のぜん動運動を抑制します。
「抗コリン薬・抗ヒスタミン薬・向精神薬・抗うつ薬・抗パーキンソン薬・抗不整脈薬」消化管の緊張を緩和してしまい便秘の原因となりやすいです。
そして便を作り出すことに繋がる消化管の運動をを低下させるものに「降圧薬(Ca拮抗薬)」があり、収れん作用により副産物的にぜん動運動を低下させるものに「制酸薬・鉄剤・収れん薬(ビスマス製剤)」などがあります。
4.便秘解消の秘訣「排便環境最適化」
便秘を解消するために便通に良いとされることは「便意を起こす(逃さない)・便の状態を改善する・腸内環境を最適にする・排便に有効なマッサージ」があります。
これは便通の入り口から出口までの問題を全て解決してくことで便秘を治すという考え方で便秘の原因にアプローチでき根本的な便秘解消が期待できます。
便意を起こす
通常、便意とは、食べ物が胃に運ばれた刺激によって大腸内の便が直腸に運ばれることで起こる排便のシグナルです。
便秘の方は便意が起こり難かったり、感じ難かったりする方が多くその原因は排便をコントロールする自律神経の働きを妨げる「ストレス」が影響し便意に必要な「結腸反射」や「排便反射」を阻害してしまうからです。
現代の日本はストレス社会と言われるほど社会でもプライベートでもストレス環境下に置かれていますので、ストレスを低減させるために1日の内どこかで心からリラックスできる時間を設ける工夫を行い自律神経を休める環境整備が必要です。
日々感じるストレスを低減させることで自律神経の働きを整え排便に必要な情報伝達を正確に行い便意を「起こす・感じる」ように改善を目指しましょう。
便の状態を改善する
便の状態が便秘原因となるものに「水分量が少なく硬い便」があります。
便が硬いとぜん動運動が起こっても便が移動し難く、水分が少ないことで潤滑性も低くなるため大腸内や直腸での便の滑りが悪く物理的に排便し辛い状態となるのです。
つまり、便の質を排便に適した「水分量が多くて柔らかく滑りが良い」状態に改善することで物理的に排便しやすくなるのです。
排便に適した便にするために「水分を十分に摂る・オリーブオイルを摂る」ことで柔らかく滑りの良い状態に改善することができます。
腸内環境最適化
腸内環境が悪玉菌優勢になると腸内腐敗が起こりぜん動運動が低下したりガスが発生して詰まることで排便し辛くなってしまいます。
便通を促すことに適した腸内環境は消化吸収を促し、ぜん動運動が促進される善玉菌や乳酸菌優勢の環境下となるのでこれらの菌を増やす食生活を送る必要があります。
まず善玉菌を増やす為に乳製品や発酵食品を多く取り入れ、善玉菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖を摂取することで善玉菌を増やすことにも貢献します。
そして悪玉菌を増やさない為に高脂質な食生活を控えることも腸内環境を改善するポイントとなります。
排便に有効な運動とマッサージ
運動不足による筋力の低下やストレスの蓄積などによってもぜん動運動は低下し便秘に繋がることもあります。
逆に言うとぜん動運動に有効な運動や腹部のマッサージを行う事で便を運び便意を起こすことも不可能ではありません。
ぜん動運動を起こしやすい運動にはウォーキングなどの有酸素運動から腹部に圧力を加える腹筋運動があり、マッサージには腹部に「の」の字を書くようにお腹をさすって物理的に大腸を刺激し排便に必要なぜん動運動を促すという方法もあります。
排便しやすいタイミングを逃さない
便秘の人でも必ず排便は行われており、そのタイミングでは必ず便意を感じているはずです。
しかし便秘の人の多くはタイミングが悪くてせっかく便意を我慢する人がほとんどです。
排便に便意は必要不可欠なものなので排便しやすいタイミングと便意が起こるタイミングを揃える工夫をすることで排便を促すようにしましょう。
排便しやすいタイミングは朝と言われており、それは夜寝ている間に排便する為の準備を行っているからです。
つまり朝は便意が起きやすいタイミングなので起床後便意を起こす為の「朝食・水分」をしっかりと摂り排便する為に必要な時間の余裕を設ける事で「朝に排便する」タイミングを設けるようにしましょう。
それでも便秘が良くならない場合は、根本的に「血液循環が悪い」可能性が高いです。
その場合は漢方による血行不良改善と身体と腸内環境を整える事で「優しく便秘を改善」することができます。
辛い便秘症状に一人で悩まないでお気軽にご相談下さいね。