不眠を生み出す原因について

不眠の原因は多岐に渡り存在しますが、睡眠のスケジュールを決定する「概日リズムの乱れ」と睡眠を実行する「ホルモン分泌の乱れ」に大別されます。概日リズムの乱れについては生活習慣やリズムに問題が生じていることが多く、ホルモン分泌の乱れに関しては恒常性(ホメオスタシス機構)があらゆる問題によって機能が低下している可能性が高いです。

1.不眠を構成する仕組み

正しい時間に眠れない、眠りが浅いといった「不眠」症状を作り出してしまう原因は1日の睡眠スケジュールを決定する「概日リズム」が狂ってしまうことと、睡眠不足を取り返す「睡眠の恒常性」が狂いお互いのシステムが正しく機能しないことが原因なのです。

概日リズムが乱れる

現代社会での生活では、テクノロジーの発展により「LED照明・パソコン・スマートフォン」などのブルーライトを発生させる機器と常に密接な関係にあります。

ブルーライトの光の強さは太陽光の強さと同等で、身体は常に太陽の光を浴びていると認識します。

本来人間が眠りにつく仕組みとして、起床後に朝日(太陽光)を浴びる時間によって夜の就寝へのリズムをホルモン分泌によって整えるという概日リズムが働いているのですが、現代社会では電子機器の発展により日夜関係なく太陽光と同等のブルーライトを浴びています。

このように、常に太陽光にさらされていて常に明るい環境が、起床から就寝までのリズムを決定する概日リズムを狂わせてしまい、夜「眠気が起きない・寝つきが悪い」という睡眠障害を引き起こしているのです。

ホメオスタシス機構が乱れる

現代社会はストレス社会と言われています。

現代人は子どもから大人までそれぞれの生活環境下で常にストレスにさらされており、様々なストレスを受けることで眠るために必要な神経伝達やホルモン分泌機構が正常に働かなくなります。

現代人はテクノロジーの発展による概日リズムが狂い「未来の睡眠」が上手く取れない環境下にいながら、睡眠不足を取り戻すためのホメオスタシス機構による睡眠もストレス環境下で正常に働かない状態にあります。

つまり、現代社会の大きな不眠の原因は「概日リズムの狂い」と「ホメオスタシス機構の狂い」による未来の睡眠と過去を清算するための睡眠のどちらも取り難い環境によるものなのです。

2.不眠の原因一覧

不眠を構築する原因のほとんどは1日の睡眠のリズムを作り出す「概日リズム」に影響を与えるものと、概日リズムによる睡眠をサポートするホメオスタシス機構に影響を与えるものの2種類です。

概日リズム(体内時計)に影響を与える物は「覚醒因子」であることが多く、ホメオスタシス機構に影響を与える物は「ストレス因子」であることがほとんどです。

概日リズムに関与する不眠原因

概日リズムは1日の睡眠スケジュールを決定するシステムで、スケジュールの決定に「太陽光・食事・運動」などの同調因子の刺激が関与しています。

特に覚醒を維持する因子「光・食べ物」に強く影響されるので、これらの同調因子が不適格なタイミングに作用すると、概日リズムによる体内時計が狂い睡眠スケジュールが狂ってしまいます。

・覚醒作用

覚醒を促してしまう食べ物(成分)やシグナル(光)などの同調因子を不適切な時間(夜間)に刺激として受け取ってしまうと、概日リズムに狂いが生じ睡眠に必要なメラトニンの分泌や深部体温の低下などが起きなくなるため、「夜眠れない・寝つきが悪い」という睡眠障害を引き起こしてしまうのです。

・老化現象

人は年齢を重ね老いていくと徐々に眠りが浅くなります。

例えば老人になると起床時刻が早まってしまったり、何度も夜目覚めてしまうことです。

これは加齢によって体内時計に狂いが生じるため、概日リズムによる正確な睡眠プログラムが働かなくなるため起こる現象です。

ホメオスタシス機構に関与する不眠原因

ホメオスタシスは自律神経を通して「内分泌・免疫」をコントロールしています。

つまり、自律神経が正確に働かなければ、眠るために必要なホルモン分泌を行う内分泌も正常に機能せず、眠れないために免疫も正常に働かないということになります。

すなわち、ホメオスタシスを正常に働かせるには自律神経が重要となりますが、自律神経に大きな影響を与えるのがストレスなのです。

・精神的作用

恒常性(ホメオスタシス)に大きな影響を与えるものにストレスがあります。

ストレスは体内で指令の伝達を行う自律神経の働きに影響を与えてしまうため、「ストレスによる自律神経不調→内分泌機能低下→ホルモン分泌低下」となってしまうのです。

・性ホルモン

人には雌雄を分ける性ホルモンが存在します。

男性にはテストステロン、女性にはエストロゲンに代表されるホルモンがあり、ホルモンが豊富な時は体調も良いですが、加齢によりホルモン分泌が低下すると更年期症状が起こり体調悪化による身体へのストレスも増加します。

つまり「加齢による性ホルモン低下→更年期による身体へのストレス→内分泌低下」となってしまうのです。

・体温調節

恒常性の維持という言葉の通り、ホメオスタシスは身体を健康な状態に保つ働きがあります。

しかし普段から身体が冷えている「冷え性」の方は血行不良の影響によりホメオスタシスの体温調節機能が正常では無いと言えます。

特に手足が冷える「末端冷え性」の方は深部体温が下げにくいので寝つきが悪いのです。

つまり「冷えによる熱放出の悪化→深部体温が下がらず眠気が起きない」となってしまうのです。

時間に縛られる現代社会が不眠の連鎖を生む

現代社会には概日リズムを狂わせる「LED・パソコン・スマートフォン」から発せられるブルーライトに常にさらされており、1日の睡眠スケジュールが狂い、夜に正しく眠り難い環境です。

寝る時間が遅い場合には、本来のホメオスタシス機構が働くことで、睡眠時間がずれ込むために足りなくなる睡眠を回収しようとしますが、現代社会では時間に縛られ決まった時間に起きなければなりません。

つまり、常日頃、時間に縛られているので概日リズムの狂いによる睡眠不足を回収することができず、日々睡眠不足に陥ってしまうケースが多いのです。

睡眠負債は現代病

上記のような現代社会の時代の流れによって不眠の連鎖に巻き込まれ、常に眠る時間が少なかったり、睡眠時間が安定せずバラバラという人は多いと思います。

この慢性的な睡眠不足が継続すると、不思議と眠りたい時にすぐに寝られるようになります。

これは睡眠不足が蓄積し過ぎて、本来睡眠中に行わなければならない「心身の休息・免疫による回復」が追い付いていないため、たまった仕事を片付けるために空いた時間は睡眠に回すという身体の救済システムなのです。

この状態を「睡眠負債」と呼び、健康を崩しやすく危険な状態で、アルツハイマー病やがんの発症リスクが高まると報告されています。

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