中高年の男女でおこりやすい「めまい」は、ぐるぐる回る感じやふわふわする感じなどの不快症状が表れる病です。主な原因は三半規管にトラブルが起こることで発生し、多くは難聴や耳鳴りなどの「耳のトラブル」を併発します。漢方を用いる東洋医学では、目まいの原因となる「ストレス・血液」に対し生薬と食養生で改善に導きます。
1.めまいとは
めまいとは、自分や周囲が動いていないのに動いているように感じる異常な感覚のことで、からだのバランスを保つ機能に障害が起こると発生します。
めまいの主な種類
めまいには、自分や周りがぐるぐると回る「回転性めまい」と、何となくふわふわする感じや雲の上を歩いているような感じである「浮動性めまい」と、立ちくらみでみられるような目の前が暗くなるような「眼前暗黒感」に分けられます。
このうち回転性めまいは、主に耳の病気が原因である場合が多いとされ、耳鼻咽喉科での詳しい検査が必要になります。
めまい発症の割合と分布
厚生労働省国民生活基礎調査によるとめまいを訴える患者の数は年齢とともには増加し、65歳以上では人口1000人あたり男性では28.1人、女性では47.3人と、しばしばみられる症状です。
特に中高年の女性に多く、我慢強い方や真面目な方で発症しやすい症状です。
2.めまいの原因
「耳に原因がある・脳に原因がある・その他の原因(生活習慣病など)」とめまいの原因は大きく3つに分けられます。
特に耳由来のめまいが多く、その理由は「からだのバランスと保つ」という大事な機能があるからです。
めまいは平衡感覚が狂うことで起こる
体のバランスは、目による視覚、内耳による平衡覚、関節や筋肉に存在する深部知覚からの情報が脳で統合されて維持されると考えられています。
これのうちのいずれかに異常があれば体のバランスが崩れめまいが生じると考えられています。
臨床統計によるとめまいを訴えて病院を受診した患者の60%程度は耳の異常が原因とされています
ストレスの蓄積がめまいへと繋がる
ストレスが多い現代生活の影響や、急激に進む高齢化に伴って、めまいやふらつきを訴える人は多く、メニエール病の発症にはストレスや過労などの精神心理的な影響が強ことも知られています。
ストレスが蓄積することで自律神経の働きが乱れ、三半規管のコントロールやエネルギー源の供給が低下します。
その結果、直接的なめまいや間接的なメニエール病、突発性難聴からめまいへと繋がってしまうのです。
めまいに繋がる疾患一覧
突発性難聴
突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患です。
40~60歳代の働き盛りに多くみられ、ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると起こりやすいことがわかっています。
聴力を回復させるには、早めに治療を開始することが重要です。
メニエール病
めまい訴える患者全体の20%程度を占める病気で、耳の奥にある内耳の内リンパ液が過剰に貯まってくる「内リンパ水腫」がその原因であると考えられています。
この病気では、繰り返す回転性めまいとともに、耳鳴りや耳が聞こえにくいなどの聴覚の症状を伴うことが特徴です。
発作時には激しいめまいのために日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
また病気が進行するにしたがって徐々に聴覚の症状が進行し、放置すると高度難聴となってしまう危険があります。
良性発作性頭位めまい症
この病気は、頭をある一定の位置(めまい頭位)にした場合に、数十秒間持続する激しい回転性めまいと目の動き(眼振)を引き起こすことが特徴です。
また寝転んでいるときや座っているときなどは症状がないことも特徴です。
めまいを訴える患者の中で最多を占め、めまい全体の30%から50%はこの病気なのです。
この病気の原因は、三半規管の中に炭酸カルシウムでできた耳石という結晶が入り込んでしまった状態(半規管結石症)であると考えられています。
三半規管内の耳石は、頭の位置が変わるたびに移動し、同時に内リンパ液の流動を引き起こし、めまいを生じさせるのです
3.めまいに対する病院治療
基本的には薬物療法や「頭を傾ける」などの対処療法がメインとなります。しかし、これらの治療で改善できない場合には外科的処置を行う場合もあります。
薬物療法
メニエール病は内耳の内リンパ液が過剰に貯まった状態ですので、治療の基本はこれを排出させるために利尿剤を用いることです。聴力の低下が著しい場合は、ステロイド剤を使用することもあります。
手術療法
メニエール病の薬物療法を行っても改善しない場合は手術による治療が必要となります。
内リンパ水腫は内耳で作られる内リンパ液が十分に吸収されないことによるものと考えられています。
そこで内リンパ液の圧力を中耳に逃がすために内リンパ嚢を切開する方法(内リンパ嚢開放術)を実施することもあります。
また良性発作性頭位めまい症の場合は、三半規管内の耳石をもとの場所に戻す治療法(浮遊耳石置換療法あるいは頭位治療、この治療法の発明者にちなんでエプレー法とも言います)によって、60%程度の患者は翌日にはめまい症状が軽快することができます。
これらの治療によっても改善しない場合や再発をしばしば繰り返す場合には、半規管内で内リンパ液の動きを止める半規管遮断術を行います。
4.東洋医学で診るめまい
漢方を扱う東洋医学では古くから「めまい」の改善に取り組み多くの治験を残しています。
東洋医学は西洋医学とは異なる概念で治療ができるので、改善が見込めず落胆されいる方も第2の治療として試す価値はとても高いのです。
東洋医学概念の「水」に問題がある
漢方処方において、めまいは主に「水」が原因で起こると考えています。
身体の代謝しきれない余分な水が、頭部で脳脊髄液や耳の内リンパ液の循環に影響をおよぼすことによって、めまいや耳鳴りを引き起こすという考えかたです。
「水」が原因のめまいでは、めまいのほかに頭痛、むくみ、小便の異常、下痢なども水分の代謝異常として起こることがあります。
また胃内停水を伴う場合には胃腸障害を認めることがあります。
このような病態では身体の余分な水を汗や尿として体外に排出する漢方薬(利水剤)を使用します。
東洋医学の「血」血液循環に問題がある
「血」が原因のめまいの原因としては瘀血と血虚が考えられます。
瘀血とは正常の血流量が増加したときにのぼせを伴うという考え方で、血虚は正常よりも血流量が減少したとき(貧血)で冷え性の人のめまいが相当します。
ただし、瘀血と血虚を厳密に区別するのは難しい場合には他の身体所見も併せて判断します。
漢方の世界では血液は「健康の基本」と考え、常に適正で良い状態を目指します。
生活習慣/環境を見直す
めまいの原因となる突発性難聴や耳鳴り、自律神経の乱れはストレスの蓄積に起因することが少なくありません。
ストレスは精神的にも肉体的にもダメージを与えてしまう、身体を壊す因子です。
ストレスが多い環境下であれば、真っ先にストレスが減る環境に変更しなければなりません。
身体に対するストレスの原因は主に食生活です。
動物性脂肪の過剰摂取は身体に酸化ストレスを与え、代謝の状態を悪化させます。
このように心のストレスと身体のストレスを減らす努力もめまいの治療には必要不可欠です。