睡眠の仕組みについて

人やほとんどの動物は自然と眠りに付く物ですが、どうして睡眠が必要なのでしょうか。実は、睡眠中には身体を成長させたり、細胞の修復を行ったりと命を営むために様々な化学現象が起こっており睡眠は生きる為に必要不可欠な生理現象だからです。

1.眠る理由(睡眠の意味)

睡眠を必要とする理由は脳と身体を休め生命を維持する為です。

3大欲求と呼ばれる「食欲・睡眠欲・性欲」の本能行動の内、食と睡眠を欠けば生物は死んでしまいますし、餓死よりも無睡眠による死の方が早いという実験結果が存在するぐらい生きるために必要なものが睡眠なのです。

生命を維持するための睡眠

・心身の休息(自律神経)

睡眠によって脳が休まることで、支配下にある「神経・組織・機関」も休むことになります。

脳や神経を「心」とすると、「身体」は組織(細胞)や器官(内臓)となり、睡眠は文字通り「心身」を休ませる生命活動の一部であり本能行動なのです。

・身体を作る時間(内分泌)

睡眠は身体を休める時間でもあり、同時に身体を作る時間でもあります。

睡眠中には、成長ホルモンを始めとする日々の身体の代謝反応(生命活動)をサポートする為のありとあらゆるホルモン分泌(生理活性)を行う大切な時間なのです。

・細胞レベルでの修復(免疫)

睡眠時は心身ともに休まりますが、睡眠中は身体のなかのすべてが休んでいる訳ではありません。

日々の活動で傷ついた組織や器官に対して、免疫力や自然治癒力を活発に活性化し修復する時間でもあるのです。

その結果、日々の健康は睡眠から作られているのです。

2.眠りにつく仕組み

人が睡眠につくには、大きく分けて2つのシステムが関与しています。

1つ目が体内時計や概日リズムに影響される時刻依存性の睡眠であり、2つ目が体内時計や外界の刺激に影響されない時刻非依存性の睡眠です。

この2つの睡眠機構が互いに相関することで1日の睡眠の「量・質」をコントロールしているのです。

時刻依存性の睡眠

概日リズム(サーカディアンリズム)による睡眠のことを指します。

概日リズムとは、地球の自転24時間周期に伴う日周の生物時計によって同調する時刻依存性のリズムです。

1日単位でリズムは毎日リセットされていて、外界や食事などの生活から与えられる刺激によって睡眠をコントロールする未来を想定した睡眠プログラムです。

概日リズムによる睡眠を構成するもの

概日リズムは、地球の24時間周期と、約25時間周期である体内時計の周期を、外界の刺激(同調因子)によって24時間周期に毎日セットするものです。

概日リズムによって睡眠をコントロールするものに「深部体温リズム・メラトニン分泌リズム・睡眠-覚醒リズム」の3つの体内時計が関与し、日々の眠りを作り上げているのです。

体内時計の同調因子

人の身体には概日リズムがなくても、睡眠と覚醒を行うための体内時計「深部体温リズム・メラトニン分泌リズム・睡眠・覚醒リズム」が備わっていますが、24時間周期で明暗を迎える地球で生活する上で、外界の刺激による概日リズムと連動し睡眠周期をコントロールしているのです。

その約24時間周期の概日リズムをリセットする刺激を同調因子と呼び、主に「光・食事・運動」などがあり特に光による刺激が概日リズムに影響を与えます。

・深部体温リズム

人は眠りにつく時に手足が温かくなります。

これは身体の深部(内臓)の温度を手足から逃がすことで深部(内蔵)の温度を下げ眠りにつくためです。

この深部(内臓)の温度を下げる仕組みを深部体温リズムと言い概日リズムと連動して制御されています。

・メラトニン分泌リズム

朝起床して朝日を浴びることで1日の睡眠リズムのコントロールが始まります。

朝に日光を浴びた時間によって夜眠りにつくためにメラトニンというホルモンの分泌をコントロールするものがメラトニン分泌リズムです。

・睡眠・覚醒リズム

24時間周期の概日リズムの影響がなくても、人はほぼ同じ周期で睡眠と覚醒を行えます。

これは人の身体に「睡眠・覚醒リズム」という体内時計があるからで、本来は外界の刺激による概日リズムと連動して睡眠をコントロールしています。

時刻非依存性の睡眠

ホメオスタシス(恒常性の維持)による睡眠を指し、別名では「睡眠の恒常性」とも呼ばれます。

ホメオスタシスとは「自律神経系・内分泌系・免疫系」の各機関がバランスを保つことで身体の健康状態を一定に保つ体内の仕組みです。

睡眠の恒常性は本来、概日リズムによって得られた睡眠の不足分を補うための睡眠システムなので、時刻に依存せず1日の睡眠結果を振り返り必要な睡眠を「回収する」という睡眠システムです。

例えば、テレビを夜中まで見てしまい概日リズムによる睡眠が乱れ夜更かしすると、翌日の日中が眠くなるのはこの仕組みが働くためです。

ホメオスタシスによる睡眠を構成するもの

ホメオスタシス機構は「自律神経・内分泌・免疫」をコントロールし身体を健康に保つシステムです。

睡眠で言えば「ホルモン分泌」を担い、生理的に眠るために働きます。

概日リズムによって睡眠の指令が出ている時も指令を受けて実際に睡眠導入を行うのは「自律神経(指令の伝達)→内分泌(ホルモン分泌)→免疫(細胞の回復)」というホメオスタシス機構なのです。

・眠るためのホルモン分泌

脳下垂体から睡眠に関し眠りに導くホルモンであるメラトニンの分泌を促します。

メラトニンには「脈拍・体温・血圧」を降下させる働きがあり、この身体の機能を休める作用に伴い睡眠に導きます。

・睡眠を阻害する覚醒物質の抑制

概日リズムによる睡眠の指令を阻害してしまう「ノルアドレナリン・セロトニン・ヒスタミン・アセチルコリン・オレキシン」などの覚醒を維持する神経伝達物質をGABA作動性神経が抑制します。

3.睡眠中に体内で起こる効果

睡眠には大きく分けて2種類の質の違う睡眠状態が存在します。

1つ目が通称「深い眠り」と言われるノンレム睡眠と呼ばれているもので身体や脳を休めるための睡眠となり、2つ目がレム睡眠と呼ばれる浅い眠りで起床に伴い脳を覚醒させるための睡眠です。

人の眠りは通常2種類の睡眠で構成されています。

睡眠の種類(ステージ)

睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠の2種類が存在し、それらがある一定の感覚で交互に起こっています。

そしてノンレム睡眠には4段階のステージが存在し段階が上がる度に眠りは深くなっていく脳や身体にとって重要な生理活性が起こる大切な睡眠段階なのです。

つまり眠るとは、ノンレム睡眠の4ステージ後にレム睡眠が発生するというサイクルを繰り返すことで睡眠という生命維持に必要な生理現象を構成しているのです。

ノンレム睡眠

・ステージⅠ

傾眠状態で本格的な睡眠に導くための状態で、うとうとしたり、意識が失われる段階です。

・ステージⅡ

睡眠紡錘がみられ、軽い寝息を立てる中程度の睡眠状態となります。

・ステージⅢ

低周波のΩ波が見られ(20%~50%)、深く寝入った状態となるので外界の刺激にも反応し難い睡眠状態です。

・ステージⅣ

低周波のΩ波が50%以上の状態になっておりノンレム睡眠の中で最も深い段階で、熟睡とはこの段階のことを言います。

レム睡眠

・レム(REM)とは

急速眼球運動 rapid eye movement(REM)が見られる状態のことで、エネルギー消費量も覚醒時に近い状態です。

・レム睡眠の質

睡眠の深さで言うとかなり浅い状態で僅かな外界の刺激にも反応し目覚めやすい状態です。

ノンレム睡眠(熟睡)時に起こる効果

ノンレム睡眠中のステージⅢ~Ⅳにかけて成長ホルモンの分泌を促し子供では身体の発育を促し、大人では成長ホルモンによる代謝を促しています。

そしてこの睡眠段階では同時に免疫力も増強され、細胞レベルでの身体の修復が行われるのです。

例えば、風邪をひくと眠気が起こりたくさん寝ても目が覚めないことがありますが、これは睡眠によって身体の免疫力を上げて回復させるための身体の仕組みなのです。

レム睡眠時に起こる効果

レム睡眠にはステージがありません。

そして目が動いたり、体温が上がることでエネルギー消費量も増えている状態です。

レム睡眠時の身体は覚醒状態に近い状態となっており、目覚ましや外界の刺激に左右されないで目が覚めるタイミングもレム睡眠時が多いのです。

つまりレム睡眠とは、回復のためにノンレム睡眠から本格的な覚醒(起床)へと橋渡し的な役割を果たし、脳が目覚めるための睡眠領域なのです。

このように睡眠時に身体では様々な反応が起きており、睡眠も立派な生命活動なのです。

つまり生きるために睡眠は必然であり自然なシステムなのです。

しかし文明の発達と経済が発達した現代社会では、身体に眠るための仕組みが備わっているにもかかわらず「眠れない・寝つきが悪い」といった睡眠障害に悩んでいる方が多数おられます。

なぜ現代社会が睡眠を阻害してしまうのかというと、文明が発達し生活の利便性が向上したり「テクノロジーの進歩による概日リズムの狂い」と、経済を成長させるために身を粉にして働いてきた「ストレスの蓄積が睡眠の恒常性を狂わせている」ことの2つがが大きな原因なのです。

不眠についてさらに詳しく知りたい方は下の記事をご参照下さい。

不眠の仕組み

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